CHAPTER 01
見て見ぬふりの、あの場所
洗面台の排水口。毎日使うのに、できれば見たくない。たまった髪の毛にはさわりたくないし、掃除はつい後回しになる。家の中でいちばん「見て見ぬふり」をされている場所かもしれません。
カナタラ代表の李は、前職で水まわり用品のマーケティングを担当していました。マーケティングの部署がない会社だったので、関連書籍を30冊ほど読み込み、すべて手探りで始めた仕事でした。クラウドファンディングでの商品発表から、SNSでの発信まで。やがて紹介動画が180万回、400万回と再生され、それまで市場になかった「排水口ネット交換式」というカテゴリが、多くの家庭に届いていきました。
うれしい経験でした。ただ、心に引っかかるものも残りました。当時の商品は金属でできていて、水まわりで使う以上、サビの心配がつきまとう。「もっと良いものが、つくれるはずだ」。その思いは消えず、会社が終わったあとの時間で、少しずつ試作を重ねるようになりました。
その「もっと良いものを」という気持ちが、カナタラの始まりです。
CHAPTER 02
「かなったらいいな」から、カナタラ
会社の名前には、いくつもの意味を重ねました。
「想像力の彼方」の、かな。子どものころ、誰もが夢の道具を思い浮かべながら口ずさんだ、あの歌の「〜たらいいな」。ふたつを合わせると、「叶ったらいいな」になります。日常の中の「あったらいいな」という小さな想いが、叶ったらいいな。それをカタチにする会社でありたい。
もうひとつ。代表・李は大阪生まれ、大阪育ちの在日韓国人です。韓国語には「가나다라(カナダラ)」という、日本語の「あいうえお」にあたる字母の並びがあります。すべての言葉が、ここから始まる。ものづくりも、いつでも原点から。その願いも、この名前に込めました。
社名に込めた願いを、最初にカタチにしたのが「おそうじクラゲ」です。
じつはこの商品、形より先に「クラゲに似ているな」という気づきがありました。そしてもうひとつ気づいていたのは、このカテゴリの商品には「洗面台ヘアキャッチャー」「ゴミ受け」といった説明的な呼び名しかない、ということでした。名前がなければ、覚えてもらえない。愛着も生まれない。だから、形と同じくらい真剣に、名前を考えました。社内でいくつもの候補を出し合い、最後は全員で決めました。「おそうじクラゲ」。呼ぶとすこし楽しくなる名前です。
CHAPTER 03
硬度30から80まで、ぜんぶ試した
素材は、サビないシリコンに決めていました。問題は、そのやわらかさです。
やわらかすぎると頼りなく、硬すぎるとネットの付け外しがしづらい。本体のいちばん薄いところは約1ミリ。この薄さで最適な感触を探すために、硬度30から80まで、段階を変えたサンプルをすべて試しました。ネットが付けやすく、外しやすいこと。この一点のために、サンプルの依頼と修正を何度も繰り返しています。
色にもこだわりました。どんな洗面台にも、美しく調和すること。納得できる色にたどり着くまで、3度、4度と調整を重ねました。サイズは、これまでの商品では使えなかった小さめの排水口にも対応できるよう、排水性能をできるだけ損なわない範囲で小型化。パッケージは、店頭で見た瞬間に「何の商品か」が伝わるデザインを詰めていきました。
代表の李は、大学で哲学を学びました。哲学で訓練されたのは、本質以外のものを削ることだったといいます。おそうじクラゲのシンプルなつくりは、その考え方の延長にあります。
置くだけ。ネットを替えるだけ。
それ以外の余計なものは、足さない。
CHAPTER 04
お客様と、つくり直す
止水カバーなしのおそうじクラゲを発売すると、「とても使いやすい」という声をたくさんいただきました。同時に多かったのが、「水を溜められるようにしてほしい」という声です。この声に応えるため、止水カバー付きモデルの開発を急ピッチで進めました。
正直にお話しすると、うまくいかなかったこともあります。止水カバー付きモデルでは、高級感を出すために本体の表面仕上げを変更しました。ところがその改良の結果、一部でネットが外れやすくなる不具合が出てしまいました。お問い合わせやレビューでご連絡をいただいた方への対応を行うとともに、原因を確認したうえで製造を修正し、もとのグリップの効く仕様に改めています。この経験は、いまも私たちの教訓です。見た目の良さと使いやすさは、どちらかを選ぶものではなく、両立させるもの。
もうひとつ、止水カバー付きの発売にあたって、どうしてもやりたいことがありました。止水カバーなしを先に選んでくださった方への、止水カバーのプレゼントです。本当は最初からカバー付きでお届けしたかった。けれど、生まれたばかりの会社にはその力がありませんでした。実績もなく、名前も知られていない会社の商品を、それでも選んでくださった方々がいた。その皆さまがいたから、カバー付きをつくることができました。だからこのキャンペーンは、販促ではなく、感謝のしるしです。
2026年6月に発売したお風呂用には、これらの経験をすべて注ぎ込みました。グリップと質感の両立。そして、ご家庭ごとに形の違うお風呂の排水口に合わせて、カットして使える設計。厚みや硬さも、納得できるまで何度もサンプルを重ねています。
発売してからも、直し続けています。この1年で、洗面台用だけでもパッケージの変更が3回、説明書の変更が5回、販売ページの修正は10回を超えました。声をいただくたびに、少しずつ良くなっていく。それが私たちのものづくりです。
CHAPTER 05
排水口には、「おそうじクラゲ」
これからの予定を、少しだけ。
「ネットも一緒に買いたい」という声にお応えする専用ネットの販売準備が、大詰めを迎えています。新しい色として、ホワイトも計画中。キッチン用は2サイズで準備を進めています。その先には、シリコンとステンレスを組み合わせた新しいおそうじクラゲの構想もあります。
目指しているのは、「排水口には、おそうじクラゲ」と言っていただける未来です。名前のなかったこの場所の道具に、名前と愛着を。あなたの毎日の「めんどくさい」が、ひとつでも減りますように。
小さな「あったらいいな」を、これからもカタチにしていきます。